【出版NPO「本をたのしもう会」からのメッセージ】
今年は戦後 80 年の年である。世界が、そして日本も大きな転機にさしかかっている。この間さまざまな場面で「リベラリズム」と「保守」の対立が激しさを増しているように見える。「リベラル」とは何か、「保守」とは何か。本質的な問題として問い直しを迫られているのは、この国の社会的価値観や思考原理、あるいは社会関係の在り方ではないか。この問題を一貫して問い続けてきたのが、中島岳志さんの「保守とリベラル」という問題提起であった。歴史の転換点に立つ今、明日への可能性を切り開く中島さんからの提起に耳を傾けたい。
日時:2025年4月12日(土)午後2時~4時15分
会場:小金井市宮地楽器ホール(JR中央線武蔵小金井駅 南口徒歩1分)
(申込先着570名・全席自由席)
聴講料:一般1500円/学生500円(当日会場受付にてお支払いください)
【中島岳志さんからのメッセ―ジ】
近年の日本では、一般に「保守」と「リベラル」は対立する概念として捉えられています。しかし、この見方には大きな問題があると私は思っています。むしろ保守こそがリベラルでなければならないというのが、私の主張です。それはいったいなぜか。
この問題を考究するためには、そもそも政治における「保守」とは何かを明確にしなければなりません。近年は「保守」のインフレ状態にあり、「保守」の輪郭が崩壊状態にあります。まずは、近代保守思想がどのように誕生し、いかなる人間観・社会観を持ってきたのかをたどる必要があります。
また、現代日本の政党や政治家のあり方を吟味する必要があります。果たして、安倍内閣を支えた自民党は「保守」と言えるのか。家父長的な論理や排外主義的主張が「保守」なのか。私はどうしても、近年の「保守」といわれている政治現象が、本来の「保守」であるとは思えません。
今回の講演会では、保守の根本をとらえ直すことを通じて、現代社会のあり方を問い直したいと思います。その中で「リベラル保守の可能性」について、言及できればと思っています。
【講師プロフィール】
政治学者(近代日本政治思想研究、南アジア地域研究)。東京科学大学(旧東京工業大学)リベラルアーツ研究教育院教授。
1975年、大阪府生まれ。大阪外国語大学外国語学部卒業後、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て現職。
「リベラル保守」を標榜し、価値観を異にする人との対話や寛容性、さらには共同性を尊重する「リベラル」の原理と、人間の不完全性を自覚し歴史の知恵とも言うべき経験知や良識を尊重する保守主義の原理とを架橋することの重要性を説く。旺盛な著作活動、言論活動を続け、鋭い社会批評を展開。高い評価を獲得する。
主要著作に、大佛次郎論壇賞及びアジア太平洋賞大賞受賞作『中村屋のボース:インド独立運動と近代日本のアジア主義』のほか、『ナショナリズムと宗教』『パール判事:東京裁判批判と絶対平和主義』『テロルの原点:安田善次郎暗殺事件』『ガンディーに訊け』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄:リベラル・ナショナリストの肖像』『アジア主義:西郷隆盛から石原莞爾へ』『下中彌三郎:アジア主義から世界連邦運動へ』『親鸞と日本主義』『保守と大東亜戦争』『超国家主義:煩悶する青年とナショナリズム』『保守と立憲』『自分ごとの政治学』『思いがけず利他』など。ほかに、西部邁や若松英輔、土井善晴をはじめ、多彩な識者との共著書多数。